紗希

薄塩のポカリ 汗をかいたワイングラス 小さく泣く空の声 荒廃しきって誰にも会いたくない くたびれた身体から疲労がなかなか抜けていかない 嘆く人々 足元に闇が沈殿する 仮眠室の女と 文通する 愛という場面をお手軽に 書き割りの前で記念写真 月の満ち欠け…

ようこそ

永遠 眠気と同じ 歩く星と足音の夜 愛した人の残像のスタンプ LINEで送られてきます 変わっていることの心地よさ 降りてくる 梅雨どきを見はからう そういえばもう生まれて何年 ようこそ さよなら ようこそ ばいばい 暑い日も寒い日も 何かにつけて思い出し …

ペンギン村からおはこんばんちは

右向いて左向いてばいちゃ、ばいちゃ。 僕は今でも、ちいさいころ、夕方にやってたアラレちゃんの再放送を、熱心に見ていた風景を、思い出せます。 ちいさいころ、ドクタースランプの単行本を、寝っ転がって読んでいた感覚を、おぼえております。 それは当時…

欄干とボール

沈み込みながら頭に浮かぶのは いつも決まった空気である 雰囲気というのか 夜中の乾いたコンクリートとか 何らかの水 地下鉄の壁から漏れる錆びた水だったり 川の水だったり ギターの弾き語りもできるだけ 遠くで鳴ってるようなのだ たくさんの豆電球が 色…

お茶と魔法

退屈だと思って生きているのに 大きな魚が泳ぐ川のように 週末の 魔法 お茶をいれます 何がって 僕とは君のこと 立つ湯気はからっぽ 心の中のすべての記憶の 最もよい部分だけが そこであつまって絡まって 一人の人間になっているようなこと だから僕とは君…

おとなしい愛

深い発熱 キリストのこと 愛するべきか 忘れるならば 偉大なる誰かと僕の思い出は たぶん永遠にくり返されてゆく 夜のうちに 星は輝き終わって 広がる空がほしいまま 駅に向かう二人をとても小さく見せる 石はアスファルトに 猫は前方に 公園は背景に 何もし…

火花と銅線

フライパンのように焼けこげたらしい新しい町で 生き生きと働いている人たち 流れる汗を拭きもせず ひとつ前の戦争に勝利しようとしてる すきまのない焼夷弾 逃げても無駄とわかってる 冷たい水があればみんな目を覚ますだろうか? 想い出を焚き木にして燃え…

子どもの匂いのする場所で

マスキングテープをはがすと 僕にあたらしい 君にかつての 想いがひらく 夕方に封をして 夜にひやされて 太陽で目を覚ます 閉じるための虹色にこめられた気持ち 爪は何色だったろう? どんな言葉にも音があり はじけてぶつかる どんな贈り物にも色があるよう…

酔う(あるいは麝香)

人がゆえ酔う 生きるから酔う 酔いに涙して 酔いに強くなる いつか覚める酔いなら良いが 覚めぬまま腐る酔いもある あなたが歩くその道は美しいか 酔いながら歩くその道は輝いているか そんな質問にあなたは言う 「酔ってなんかいないわよ」 腐った酔いを身…

愛という部屋

どんな速度でもどんな温度でも愛という部屋で遊べますように走るときも休むときも同じポーズでいられるようにたのしいときもさみしいときも同じ笑顔でいられるように酔っているときその瞬間は爆発のように好きという気持ちが溢れ出す覚めたらどうなる?シャ…

それじゃまたあとで

うんそれでいいんだ。とても幸せだから。本当に包まれて僕はじつに心地がいい。嘘たちは困ったようにあたりを飛びはねている。もうだいたいの機能は終わってる。だからゆっくりと閉じていくんだ。愛しているってそういうことだよ。はじめとおわりをつかんで…

(無題)

このところ週に2回くらい動悸と涙が止まらなくなる。 それ以外は死なないために浮かれている。 今頃は天に召されているのだろうか。 もう、急にやってくる。 わたしのものにはならないのだ。 数ヶ月か数年かのその永遠にわたしは狭間で苦しむだけなのだ。 鳥…

本当の証拠

嘘は本当を隠すけど 本当は嘘を隠せない 偽りは本当の愛も美も隠す 本当は偽りを前に ただ見つめることしかできない 醜い嘘の向こうに真実はある 美しい本当の前に嘘は立ち並ぶ 偽りたちの嘲りの声 あなたの嘘であなたが見えない あなたの本当はただ美しく …

誰かが言ってた

黒点低いとこぬるいところ僕の涙が落ちてジュウって溶けるとこ誰のためでもなくあなたのために僕だけを反射してあなたのためにそんないちにちを過ごしましたか?殺そうとずっとほうちょうをにぎりしめてるよくしらないけど泣いてしまうね僕たちはいつも抱き…

真夜中に

たぶんこれは僕なんだろう そう口にだすと 涙があふれる まったく心当たりなんてないのに

君の声

声がききたくて とまどい 雪の降る日のさらさらとした 冷たい空気を思い出す 花ならいつでも摘みにいくから 君の声ならここにある 最後のためにとってある 笑顔も涙もうかばなくても 歩く気力もまるでなくても 思いだすことができなくなっても 君の声ならこ…

恋ってきっと

野球場から放物線でうちのポストに文庫が届く恋ってきっとこういうことね古いことばをひもといてわたしを探すあなたを探す恋ってきっとこういうことね恋ってきっとこういうことかも散歩の途中音がして振り向いてみたら球が飛んできた恋ってきっとこういうこ…

二人の経緯

咳き込んで命をなくすその刹那さと雪どけの拍手を混同している肉体と精神あなたはからだを痛めつけわたしはこころを傷つける美しき張りぼてのアート誰もが死を待ち退屈で踊るからだでおどるこころでおどる炎に焼かれ剥がれ落ちて死ぬあなたの最期を看取るの…

恋をしようよ

きらいなものがないのなら 恋をしようよ 忘れるものがなにもないなら 健康的に 恋をしようよ 明日の予定のない晩の 眠るまでの 酔いのように 恋をしようよ ソファの柔らかさのように 砂浜の広がりのように 宇宙の果ての暗闇のように 名前のつかない 恋をしよ…

恋の証

みんな好きすべてが恋で全部が全身愛してるってわけもないことピアノの音ヴァイオリン歌声と囁き虫や川や星にも耳をすませたくなってあなたと離れるその時にはぜひ花火をしよう打ち上げ手持ち線香花火なんでもいいから燃え尽きるのを僕は見ていたいどんな色…

アイラブユー

愛は愛と知る僕は僕と成る知らない子供はわからないすべてありのまま すべて光を見ている手を繋がないでUFOも見ないそらの名前をあてっこしてた踏みしめる土とゴミの山の道僕はバイパスをひた走り永遠にこない君を待ってるそんなことはもうわかってる涙は高…

雪だるまへ

「雪だるま」でラーメンを食べよう とても深夜に おじさんは今日も世間話をしてくれる テレビがいつもついている 『サバイバル』とか置いてある いつも誰かがビールを飲んでいる 僕もいつかはビールが飲みたい でも僕はいつも 毎回違ったラーメンを一杯だけ…

恋と幻

麻薬のように入り込んで支配してくるのだ 恋は 幻のように消えていくのだ 指の先まで充ちていて どうしようもなく脈動する のたうち回る 狂ってピアノを弾くように 麻薬のように欲しくなるのだ もっともっと でも恋はいつも幻のように まちがっていると人に…

夢のつづき

夢は終わり、夢はつづく。何万分の電話。何百回の交合。一度きりのあらゆるすべて。曲がっても真っ直ぐでまるで地球の輪郭のよう。真っ直ぐ行っても曲がっていってまるで地球の輪郭のよう。僕らの世界は終わりを折り返し、出発地点を見下ろして、高く高く舞…

太陽

それはもう大きくないよ ぬかるんだ足元の どよめいた軽はずみ 水平線の下を見つめて 濁った海の水を飲む 砂漠にいれば幸せだろうか 夜を越えたら忘れられるか 走って行こう 遠くなくても 心臓が震える たばこのけむりに 血管の引きつる感覚に 酔いどれている…

裏切り(抄)

ひとはひとをうらぎるよぼくもきみをうらぎるからそう約束して十年がたった泣きながら

同窓生

照れて名前も呼べないが可能性、あらゆる可能性無限の分岐点夢の中

ほんの少し

パソコンつけて ほんの少しだけ あの日のような 指先 誰にも伝えない こころのなかに 空をえがいた 星をえがいた そして川原に いる気になって そびえ立つ団地の 明かりを見上げた 気になって 一度もまちがえない 人生なんてない 何度もまちがえた 人生だっ…

描く

君を描く夢が描く夢それはあらゆる観念的なもの身にまとう温かさ完璧でなくても君を描くそれは夢夢のまた夢愛を描くゆっくりと端正に組み合わせすべての抽象的なものその夢の城織り成され積み重なって光を放てばそれは夢虹の源君はいるそこにいる夢のある場…

嘘つきなリーダーたちは消えていく

世の中よ嘘つきのほうから消えていくそんな君たちだからこそ僕は信じる洗練された青春のその結晶の輝きを幸あれ多すぎる音は無い平たいリアルの残像は胸の奥底にあってこそ芸術を愛でるつもりで若い娘の生き血をすするそれが自然でそれは哲学リーダーたちは…