霊園の花屋で

大いなる墓群のはし

ひらけた空をきりとった

戸のない四角な景色を望む

背もたれに沈み珈琲を飲む

 

屋根と壁の横長なスクリーン

鳥の声がするたまに来る

誘い合って猫も鳴く

雨上がり

 

以前このあたりで

カエルの大発生にでくわして

寺の横の細い道を埋め尽くし

つま先立ちで飛ぶように渡った

 

霊園のお花を売りながら

僕らにもお茶を出すこの古い古いお店では

たまにふしぎな物語をきく

池に大量発生したおたまじゃくしを見かねて捨てた住職が

すぐ死んだ

僕がカエルの大群を見たのは一度きり

あるいはあれらも霊だったのか

だれかに取り憑いて

殺すための集会だったのか

その喜びの歌か

 

おばあさんはとても死に詳しく

死に豊かで

本当に生きているのかわからないことがある