もうわたくしが誰かなど関係ない
鼻がききすぎて犬なのです
足の裏で踏んでたまえ
雀と蝉の合奏を聴け
浅暗い夏
早朝と夕暮れが折り畳まれて
わたしはいま待っているんだか
見届けているんだか
長く長くもう遠くから
たなびいてくる排気ガスの
尻尾のこげた臭いからして
畜生どもの選別が始まる
通り過ぎる従順さ
足を止める鋭敏さ
固まったビルを溶かす闇
合図だろう鳩の羽ばたき
トンボとコウモリがタッチして
大きな柳を包帯で巻く
蛙と鯉の合奏に舞う
人が消えたら川に入ろう
このまま誰からも求められずに
愛されないで死んでゆくのだ
電線にカラスでも止まっていてもらえたら
浮浪者の一人でも通りかかってもらえたら
ジョギングする猫を見たことがあるか
滑稽なものだ
没入できないわたくしはやはり
このままひずみに消えるしかない