知りませんか

文字は音楽に成り得ませんか

楽譜を読めぬ限りは

視覚的に旋律を捉えることは

不可能ですか

暖かな日、太陽の光を全身に浴びて、

柔らかで薄い植物性の透明な膜に包まれる

そんな感覚、あなたは知りませんか。

暗闇の中、星の瞬きが一々

直線になって肌に射し

瞳を閉じると空中に浮かんで

身体中に斑点のような穴が開く

そんな感覚、あなたは知りませんか。

インディアンの酋長の

ぎらりと光った眼光が

一瞬自分のものになる

背筋を伸ばして誇りに思う

昨日の自分のやった事

そんな感覚、あなたは知りませんか。

後ろめたいような

気分にもなる

余りに己が大袈裟で

格好つけてる姿さえ見てる

青空と緑の真中に僕は立っている

傍らには川が流れて

蝶々や花の匂いが好んで

僕の周りに集まってくる

そんな感覚、あなたは知りませんか。

全てが思いこみで

全ては自意識過剰で

本当は何一つ僕のほうへは

歩みよって来てくれなくて

太陽の光も星の瞬きも

成功の自負も

自然の素晴らしさも

何もかもが本当は

僕を無視して生きている

それなのに

そんな感覚、あなたは知りませんか。

畳の上で架空の猫と

夢に溶け込む

そして不思議な物語を創る

泡沫に消え

新しい眠りを求めて出かける

疲れるために

独りっきりで部屋にいる

空間の中には

四角い

幾何学的な

粒子が沢山浮かんでいて

僕はそれに取り巻かれてて

それはどこにも行かなくて

この部屋の中で

ぐるぐるぐるぐる

ぐるぐると廻る

そんな感覚、あなたも知りませんか。

座して星を食らいましょう

ガリガリとかじりついて

満腹の

ぐにゃぐにゃとした胃の中を

スターで満たしましょう

ぶよぶよになった消化寸前の食べ物たちに

超高速で突き刺さる

輝くスター

星を食らいましょう

腐れきった腹の中を

輝く一点で満たしませんか

カラーリングされた女の表情に

一滴一滴

モノクロームフィルムを垂らしてみませんか

普通に暮らしてて

右手の人差し指だけが

硬い水の塊に根元まで浸している感じ

妙な違和感

でも気持ちいい

ひんやりとして

しっかりとしていて

眼には見えないけど

右手の人差し指だけが

気持ちいい

そんな感覚を、あなたは知りませんか。