前、向いて。こっち見て。
顔に名前、書いてあんだから、呼べない。
な、前向いて。こっち見て。
笑ってるときも、怒ってるときも、同じことが書いてある。
君の顔に、おんなじ名前。一つの君には、一つの名前。
うまいこと言った、ゴダイゴ…
「呼びかけよう!名前を。」
「すばらしい名前を。」
後ろ姿や、うつむいた顔には、名前が書いてない。
だから呼びかけるときは、
「ねえねえ」「あのさ」
振り向いてくれたなら、名前を言うよ、大声で!
前、向いて。こっち見て。
顔に名前、書いてあんだから、呼べない。
音楽には、終わりがある。会話にだって、始まりがあれば、終わりはある。
すべての言葉には、終わりがある。でも、名前に終わりはない。
ぜんぶがぜんぶ、すぐれた絵画みたいなもんで、喋りだす。
風景や、匂いや、彩るすべての空気のようなもの、詰まって、弾ける。
名前、呼んだ瞬間に。
な、前、向いて。こっち見て。
つらいときも、うれしいときも、同じ顔してる。だって、
そこにある、おんなじ名前。すてきな君には、すてきな名前!
うまいこと言った?僕?うん、オリジナル。
「呼びかけよう、名前を!」
「すばらしい名前を!」
結局、それかぁ…って?
いや、本当はあるんだ。
どんな顔してても、決まったのが。
名前と同じでね。
前、向いて。こっち見て。
笑ってくれなくても、呼ぶよ、名前。一つしかないから…