東京(初)

思い出す事

核心に触れ

東京の意味を知る

 

甘いきらめきは歯を溶かす

巡り逢いに依存する

誰も叱ってはくれない日々よ

 

頭を撫でられ

慰められて

傷つけられていなくなる

 

変わり続ける濃度と形状

自由に泳げる君だけが

テレビの中にいられるんだね

 

終わらない自然の輪廻

剥製の歩くふるさとに

(ぼうやの聞き書き)

時間が色をもっていて

それが少し透けてるの

水色の透けたやつとか

セピア色の透けたやつとかの感じで

だからグラスと一緒なんだな

なんか神様がいるの

雰囲気の色とかっていうよりも

時間の色

積み重なりの色

 

教会に近い

お寺とかじゃなくて光の感じ

光が透けた感じの透明感

ブラジルもだし

愛養 BON

岸とかもそんな感じがするな

 

モカやルビーにもいこうね

 

神様がねいるの

宿ってる

それが一つ一つのものになのか

ひとりのものがどこかにいるのか

でもものに宿ってる方が近いのかな

妖精のようなものに近いのかな

そういう小さなものに宿ってる

神様って

 

(閉店を知った日に)

子供

ぼく子供だったら泣いている

子供なんだから泣いていいよね

雪解け水を飲んでもいいね

上から下まですうっと落ちる

 

ちょっとの大きな音だけで

ぼくは怖くて泣いていいよね

金切り声が聞こえたら

怯えて泣いて眠っていいよね

 

いなくなる前に泣いてみる

なくなる前に泣いてみる

叫んじゃ怖いのわかるから

声を殺して瞳を閉じて

 

お腹から黒いのが広がって部屋に満ちる

朝日が射し込むまではそのまま

それで涙は乾くけど

ひりひりと痛んで治らない

 

死んではいけないから泣いて

泣いてはいけないことはない

吐いたり噛んだりしてもいい

子供なんだからしょうがない

 

ああぼくいつまでも泣いていいよね

子供だったら泣いているもん

だから今すぐ泣いていいよね

それなら一生そばにいるから

大学は終わった

終わったんだ

もう来ない

少女は過ぎ去った

少年はいつまでもそこにいて

それで問題ないそうだ

わたしはここには戻らない

愛していたって

証拠も残さず

きれいさっぱり消えて無くなる

もちろんこの言葉たちは残りますよ

きっと永遠にね

だけどそんなの何にもならない

怒りも悲しみもこびりついて模様になって

揮発して痕になって腕にも残って

でもたとえ裁判に提出されたって

みんな呆れた顔をするだけだから

忘れることにする

ひたすら自然に

あなたのことが好きなのは

永遠として消えていくでしょう

 

おしまいなんだよ

だって大人になるんだもん

ざつぐさ野郎の微笑ま珍事

スローボール落ちる直前

全力スイングかち割る氷

バックスクリーン魂はねかえる

キラキラの硝子ショー

みぞれ雪の結婚式

 

ハイハイ光の速さで

小学校苦しんでるうちに

工場で指切って痛い

孫の顔いくつか

うつる棺桶そして墓石

 

幸福論唱え終わらん

うちに世界のすべて体内に宿る

次に教えてもらえることは

すでに地球が抱いている

 

愛の戦記

サフランライスまたはタロイモ

ワールドワイド意識下に潜り

ガールフレンド連れ回すわたし

雨が降り終わることはない

どこかを水は循環している

あの握り締めた感触を忘れない

うちにもう一度夢を見る

初体験よ何度でも

別れる

もうおしまい

切り替わらない

重くなる宇宙

ただひたすらに濃くなっていく

 

置いていく

雲の向こうの星空とともに

寸胴の底の底

暗闇を敷き詰める

 

晴れやかに僕は走るのである

軽快に脚を回し車は回る

誰もいやしない

混沌橋落ちて跳ねる

 

決意表明と思って結構

切り裂いて分けず

音のように

過ぎ去っていくように

 

最終列車を進ませる

自分の脚で終わらせる

極めてアナログで数もわからん

ただ自立しているために

めぐりを待つ

遠い遠い

女の子

大好きな友達に囲まれて

花々しくて知らなくて

新しすぎて変わってはしゃぐ

もう誰のことも信じるのやめて

目の前のことだけ信じはじめて

舞うように飛ぶように

溌剌と世界を呼び出して遊ぶ

 

あの子のことが好きだった

ただ一つだけ気になっていた

まるでヤクザとカタギの二重生活

それがバランスだってこと

 

僕はここで何十年でも眠ろうと思う

いつかまた会えるまで

遠い遠い

女の子

電車で百分のところから

宇宙より向こうへ行ってしまった

頼れるものは時間だけ

 

君は人だって殺すだろう

何度でも破り

抜け出すだろう

あかぎれのような肌に刺青を塗るだろう

二度と戻らない美しさに泣き

また次の朝日に笑うのだ

それを繰り返していつか

また

ここに帰ってきたわけさ

解題 魔女

僕が詩の中でしたくないと思っているのは、暗号化。本当に言いたいこと、意味を詩にぼかすこと。言いたいけど隠したい、そのどちらの欲求をも叶えるために、詩の形式を利用すること。そういうのはできるだけ避けてやってきた。意味の拒絶。そのあまりまったくわけのわからないものを最初のうちは書いていた。2002〜4年くらいの詩に顕著だと思う。

しかし佐藤春夫は詩集『魔女』の題言にこう言う。

 

   魔女め

   魔法で

   おれの詩形を

   歪めをつた!

 

ハハハ、そうだそういうことならば致し方ない。歪ませるほどの何かのためには、あえて歪ませねばならぬこともある。途轍もなく巨大な意味の前に無意味は無力で、詩にできるのはせいぜいそれをまさに「歪ませる」ということくらいなのだ。

僕の周囲には無数に魔女がいる。外形は問わず。形などないような魔女もいるだろう。

そのようなものたちのために僕は時に意味を受け入れ歪ませここに記す。

薔薇のような髪の人。そんな一言のためにこの文章はある。

 

   これはこれ悉く
   シィンをカットされて
   タイトルばかり
   殘し蒐められた
   一卷のフィルムである
   檢閲は美學の立場を無視して
   羞恥の鋏で行はれた

 

同詩集の「はしがき」である。僕はひたすらにタイトルを歌おう。

ゆこう

ゆかいな雪のふる夜に
ゆらゆら揺れる夢の夕日の
ゆるやかな行方
あらゆる由来

 

悠々自適 優雅に遊戯
唯一無二のゆるぎない余生
ゆっくりゆったり手を繋ぎ
ゆびとゆびとで結い上げるのよ

 

ゆたかに
ゆたかに

 

ところであの思い出の遊園地は
今やUFOのひみつきち

 

ゆかいな夕日と
ゆらめく雪と
夢さえみえたら
あらゆるゆける

素の肖像

全然僕と関係がない

ただの君

の写真

 

全然君は

言い訳をしない

 

紫の空の花

 

抱いて撮って

眼を開けて

パズルのような

わからない顔

 

愛されるために生まれてきている

そのまますべてを収めた写真

街を歩く人と話すいつもの姿とまったく違う

触れられないほどいとしく募る

 

小さく革命

 

色広々と

多感に染まり

砂利を踏む痛い足からこぼれ落ちる石を

こっそり拾いにいきたくて

めまいの壁に

大きなこと

僕のこと

わからないもの

だれかの部屋の壁に貼られているもの

 

未知のこと

開かれる桃色の扉

その向こう

 

褐色の扉

その向こうに

 

四角く囲まれた空間

そびえるものたち

空気と時間

毎日の服を

纏い続けてきたその証拠

 

匂いや

舌に来る味

二の腕にともる湿気まで

初めて知った

ここが君のこと

 

時をこえて来た

蟻のように歩き

落ちそうな点線をつたって

やがてを頼りに

 

するりと踊る

わかりきったような舞い

笑い

救急車の音 響く

 

めまいの外側に無限に広がっているらしい

部屋や空

めまいの内側に

君を呼び寄せたいものだ

 

僕のこと

この世界

わからないもの

だれかの部屋の

壁に貼られているものを

両手 両足で押し広げたい

合流

ぎゅっとしてる

怖がらないで

交換を続けてねえ

とじてもひらいても闇なのは

泳いでるからさあ

 

落ち合おう

心のなかで

ぐるぐるしてた先にいる

どんなこと考えてたって最後

混じっているなら

幸福ってものだ

 

計算は合う

頬は寄せられる

花は咲く

草は育つ

景色を見る

素敵な桜

月が好きです

星が好きです

雪が好きです

桜が好きです

 

女の子の名前にも多い

花の名前はありふれてきた

ずっとまわりに囲まれてきた

 

歩きながら光をまとって

目を瞑って想像したい

 

惜しいことをしたねあと数時間

散りぎわ虚しく勝手に泣いた

その色を僕も見たかった

鮮やかに咲いた満開のさくら

 

くすぐられるような芸術的な

輝きを二人でしたかった

今からだって遅くないから

これからたまに遊ぼうね

 

しゃんしゃんとなる足の鈴

澄ましてうんと聞こえたよ