別れる

もうおしまい

切り替わらない

重くなる宇宙

ただひたすらに濃くなっていく

 

置いていく

雲の向こうの星空とともに

寸胴の底の底

暗闇を敷き詰める

 

晴れやかに僕は走るのである

軽快に脚を回し車は回る

誰もいやしない

混沌橋落ちて跳ねる

 

決意表明と思って結構

切り裂いて分けず

音のように

過ぎ去っていくように

 

最終列車を進ませる

自分の脚で終わらせる

極めてアナログで数もわからん

ただ自立しているために

めぐりを待つ

遠い遠い

女の子

大好きな友達に囲まれて

花々しくて知らなくて

新しすぎて変わってはしゃぐ

もう誰のことも信じるのやめて

目の前のことだけ信じはじめて

舞うように飛ぶように

溌剌と世界を呼び出して遊ぶ

 

あの子のことが好きだった

ただ一つだけ気になっていた

まるでヤクザとカタギの二重生活

それがバランスだってこと

 

僕はここで何十年でも眠ろうと思う

いつかまた会えるまで

遠い遠い

女の子

電車で百分のところから

宇宙より向こうへ行ってしまった

頼れるものは時間だけ

 

君は人だって殺すだろう

何度でも破り

抜け出すだろう

あかぎれのような肌に刺青を塗るだろう

二度と戻らない美しさに泣き

また次の朝日に笑うのだ

それを繰り返していつか

また

ここに帰ってきたわけさ

解題 魔女

僕が詩の中でしたくないと思っているのは、暗号化。本当に言いたいこと、意味を詩にぼかすこと。言いたいけど隠したい、そのどちらの欲求をも叶えるために、詩の形式を利用すること。そういうのはできるだけ避けてやってきた。意味の拒絶。そのあまりまったくわけのわからないものを最初のうちは書いていた。2002〜4年くらいの詩に顕著だと思う。

しかし佐藤春夫は詩集『魔女』の題言にこう言う。

 

   魔女め

   魔法で

   おれの詩形を

   歪めをつた!

 

ハハハ、そうだそういうことならば致し方ない。歪ませるほどの何かのためには、あえて歪ませねばならぬこともある。途轍もなく巨大な意味の前に無意味は無力で、詩にできるのはせいぜいそれをまさに「歪ませる」ということくらいなのだ。

僕の周囲には無数に魔女がいる。外形は問わず。形などないような魔女もいるだろう。

そのようなものたちのために僕は時に意味を受け入れ歪ませここに記す。

薔薇のような髪の人。そんな一言のためにこの文章はある。

 

   これはこれ悉く
   シィンをカットされて
   タイトルばかり
   殘し蒐められた
   一卷のフィルムである
   檢閲は美學の立場を無視して
   羞恥の鋏で行はれた

 

同詩集の「はしがき」である。僕はひたすらにタイトルを歌おう。

ゆこう

ゆかいな雪のふる夜に
ゆらゆら揺れる夢の夕日の
ゆるやかな行方
あらゆる由来

 

悠々自適 優雅に遊戯
唯一無二のゆるぎない余生
ゆっくりゆったり手を繋ぎ
ゆびとゆびとで結い上げるのよ

 

ゆたかに
ゆたかに

 

ところであの思い出の遊園地は
今やUFOのひみつきち

 

ゆかいな夕日と
ゆらめく雪と
夢さえみえたら
あらゆるゆける

素の肖像

全然僕と関係がない

ただの君

の写真

 

全然君は

言い訳をしない

 

紫の空の花

 

抱いて撮って

眼を開けて

パズルのような

わからない顔

 

愛されるために生まれてきている

そのまますべてを収めた写真

街を歩く人と話すいつもの姿とまったく違う

触れられないほどいとしく募る

 

小さく革命

 

色広々と

多感に染まり

砂利を踏む痛い足からこぼれ落ちる石を

こっそり拾いにいきたくて

めまいの壁に

大きなこと

僕のこと

わからないもの

だれかの部屋の壁に貼られているもの

 

未知のこと

開かれる桃色の扉

その向こう

 

褐色の扉

その向こうに

 

四角く囲まれた空間

そびえるものたち

空気と時間

毎日の服を

纏い続けてきたその証拠

 

匂いや

舌に来る味

二の腕にともる湿気まで

初めて知った

ここが君のこと

 

時をこえて来た

蟻のように歩き

落ちそうな点線をつたって

やがてを頼りに

 

するりと踊る

わかりきったような舞い

笑い

救急車の音 響く

 

めまいの外側に無限に広がっているらしい

部屋や空

めまいの内側に

君を呼び寄せたいものだ

 

僕のこと

この世界

わからないもの

だれかの部屋の

壁に貼られているものを

両手 両足で押し広げたい

合流

ぎゅっとしてる

怖がらないで

交換を続けてねえ

とじてもひらいても闇なのは

泳いでるからさあ

 

落ち合おう

心のなかで

ぐるぐるしてた先にいる

どんなこと考えてたって最後

混じっているなら

幸福ってものだ

 

計算は合う

頬は寄せられる

花は咲く

草は育つ

景色を見る

素敵な桜

月が好きです

星が好きです

雪が好きです

桜が好きです

 

女の子の名前にも多い

花の名前はありふれてきた

ずっとまわりに囲まれてきた

 

歩きながら光をまとって

目を瞑って想像したい

 

惜しいことをしたねあと数時間

散りぎわ虚しく勝手に泣いた

その色を僕も見たかった

鮮やかに咲いた満開のさくら

 

くすぐられるような芸術的な

輝きを二人でしたかった

今からだって遅くないから

これからたまに遊ぼうね

 

しゃんしゃんとなる足の鈴

澄ましてうんと聞こえたよ

幻の中にいた人へ

夢 夢

紫色のが消えてゆきます

時間がばっくれ

わからなくなる

永遠があるとしたなら

こんな感じニャ

秒も時間も

わかんなくなる

ただ紫の

細いおふとんだけが

見える

女の子より

子供になりな

文学 後編

僕は時間を愛しています

それを文学といいます

回る地球に繋がって

あなたの心と繋がっている

 

舞う人が美しいのは

心と繋がっているからです

その人の気持ちが邪悪なら

どこかで地球と繋がってんです

 

全部は独立していて協力します

それがすべて一つの容器に入って実は

自由運動しております

その粒が時間です

 

神のするように愛しんで

神にするように畏まり

観念の人力で讃えて歌う

文学

 

そのままの地球にいるように

すらっと立って歩くのが

どれだけ労苦を要するか

わかるから

こんなにあなたが好きなんだ

 

その心のある場所は

つくれる

それが文学というもの

時間を愛すということで

僕こうやって

やってんの

 

何もかもを全部と思えたら

ただにっこりとほほえんで

好きな格好で遊べるんだけど

針のように降ってくる秩序に

だいたいいっつも血を流してるね

 

そんな時に天を見て にらんで

手でもかかげて

絶対だ! って誓えたら

ぱあって世界は真っ白になるんだよ

そんで踊れるよ

でもまたおうちに帰って一人きりなんて

まっぴらごめんね

文学は文字にさせられる

もっと大切なことなのに

 

だから僕らに可能なことは

真っ白な世界をほんの一瞬だけでも

一緒に見ることだと思うね

「わあ」って言って

大切に

いつか明るい世界で会おうね!

脳がバグってクルッてルン

はいはいおりたら

ステンドグラス

きらめくお部屋においでます

ステッキかざして若返り

駆け回るんルン 写真の幼児

抱きしめて僕をね

新しくしてよね

涙を浴びせて

まぼろし見して

 

ピンクとオレンジ

クルックル パーラー

 

落ち着きのないコーヒーカップ

渋いゆすらぎ

なみなみつがれて溢れました

徒歩のように

交互に

 

本当はもっとくっついてたいね

太陽は沈むね

公園の木々はぐるぐる回る

冷たい風が吹き荒ぶ

 

実に粗い 防がれた仕草

チェス如き牛歩パララリ

ポリンポン パー

パン 僕らだけに ポン

絡まる素足

手のひらの内に

遊ばすイメージもう終わる?

ね また遊ぼ

今日も言葉して、おやすみなさい

ししん

私信 指針 詩心

その他いろいろ

失うもの すべて

シシン

 

音のことよ

昔のことと

目を閉じて今

お願いね

 

君と言えばみんなになる

みんなも君に消えていく

溶けて絡まるソース

たれる

 

滋賀の米原

錫の匂い

ふっと切り取り

ここになる

 

しのびの愛です

スパークリングワイン

遠く飛ばし走る

落ち着く夜をいただきました

おやすみなさい

おなじいきもの

おなじうごき

はいはいと

ぼくたちのぞむ

 

おなじほうこう

おなじほし

ちがうなきごえ

 

じゃりんじゃりん

 

どうぶつのほし

ふわふわのにやり

りょうてをりょうあしに

ぼわーとひろがる

パジャマ着てねる

あなたの何かになるのなら

でもこれは葛藤
あなたのことを
抱きしめたい
だって
君はさみしい
誰が見たって
だからこそそう
抱きしめたらすぐ
そのさみしさを持って
どっかに消えるよ
そんなことが誰にでも
できるようならこの世に不幸は
ない
 
きみのさみしさ
有名な悲しみを
2秒で消せると
断言しますが
そんなわけにはいかないもので
契約のように
お店のように
すっきりいくわけ
ないのです
 
だからあなたはもうしばらくだけ
さみしく
かなしい
僕のせいではないのです
あなたがとても若いからです
ひとりの力がないからです
あなたが力をつけるには
よいひとか
わるい人かの協力がいる
僕はいい人でいたいのだ
 
あなたのことを抱きしめたいが
僕は父親でないのです
僕は彼氏でないのです
僕はいい人でいたいのだ
僕はあなたの架空の母親に
できれば
なりたい
 
僕が母親だったなら
あなたに何もしないであげる
僕は1人で
ビジュアル系のコンサートにでも出向くとするよ
手をつないだり
抱きしめたりはもちろんしないし
ラインだって送らない
なにもしないよ
さみしいけれども
きみはどう思う
僕は僕でもいいのだろうか