少年Aの散歩

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非常勤講師の給料/環境を愛することから

 今朝は六時に出勤した。今が旬の時間外労働である。
 非常勤講師というものは通常、担当するコマ数に応じて給料が定まっているもので、残業という概念がそもそもない。まあだいたい、一コマ一万円前後と考えていいと思う。「高給取り!」と言いたくなるかもしれないが、さにあらず。ここでの「一コマ一万円」とは、「週に一コマを一ヶ月間担当した場合、月に一万円が支払われる」のideal……意である。なんの話かカン(環)の話か。要するに、一回の授業に支払われるのは二〇〇〇~二五〇〇円程度というのが、本当のところなのだ。
 ということは、一コマにつき二時間も時間外労働をすれば、いともたやすく時給は千円を切ってしまう。今日は六時に出勤し、二コマの授業をこなし、退勤は夕方の六時くらい。そうなると、100分の授業に対し10時間の時間外労働が発生していたことになる。
 あまり普段は(特にお金に関しては)「割り算」的な考え方をしないように努めている(学費を授業数で割るなど愚の骨頂で、視野狭窄を招くだけだと思う)のだが、今日はちょっと思うところがあって、書いてみる。

 考えたくもない話だが、今日に限れば僕の時給は三〇〇円くらいなのである。もらえるお金を総勤務時間で割れば、2000×1.66÷12=276.7/2500×1.66÷12=345、となるのだ。
 僕の時間外勤務の月計がどのくらいかはわからないが、ずいぶんなのは確かだ。「割り算」をして時給を出せばいわゆる「コンビニでバイトしたほうがマシ」という額になるだろう。
 しかしこういう側面もある。非常勤講師というのは、春・夏・冬の長期休暇にも、(基本的には)出勤を強要されず、給与が支払われるのである。つまり、何もしなくてもお金が入る。すごい!
 それでこれまで、「くっそー時間外労働に手当てが支給されればよいのに!」と思うたび、「いやいや夏休みにも給料もらってるんだから……」と納得しようとしてきたのだが、よく考えたら全然そうでもない気がしてきたので、これは明らかにしておきたいと思った次第である。

 担当授業数が10コマ(このくらいしかもらえない人はけっこういる)であれば10万円、20コマ(相当多い例)であれば20万円、一般的な非常勤講師の月収はいいとこそんなもんだと思ってよい。そこから所得税やらなんとか費やらが引かれる。(もちろんなんとか年金とかなんとか保険とかは引かれず、別途払う。)ああ、なんというワープア! 他に収入源がない場合、かくじつに生活していけない。おそろしい話である。その辺の事情(ほかにいくらの収入があり、この職場ではどのくらいの収入を望むのか)を学校から尋ねられることはないのだが、そういう聞き取りとその可能な限りの反映をこそ、義務化すべきではないのかなあ。授業評価やストレスチェック(これらを行う時間にも手当てがあるべきだとさえ思う)とかよりずっと大事なことだと思うんだが、まあそのような流れにはしばらくはならんであろう。
 さて、日祝日を除く長期休みを長く見積もって三ヶ月とする。僕の場合は出勤する日もかなり多いのだが、フルで休めば春15+夏40+冬15として二ヶ月半弱。これをまあ、敵に塩を送るつもりで三ヶ月としましょう。そうなると10コマしか持たされていない人は4週間ちょい×3ヶ月で、まあオマケして130コマとします。1コマ50分として、108.3時間。まあ110時間としましょうか!
 するってえとですね、それを残り九ヶ月で割りますと(また割り算だ、割り算は邪悪)、12.2時間。月に12.2時間の時間外労働をすれば、長期休みぶんの休日は「チャラ」になるってことです。出勤が週四日なら月に17日として、割ると(割るはワルで悪!)約0.72と出る。43.2分。週三日なら13日出勤として、割ると0.94。56.3分。
 仮に20コマ担当している講師を想定しても、3ヶ月で約250コマ程度、208.3時間、仮に210時間として九ヶ月で割ると、23.3時間。月に23時間20分程度の時間外労働をすると「チャラ」になる。22日の出勤日で割ると1時間と数分。

 結論。非常勤講師の長期休み=「事実上の有給休暇」は、残りの九ヶ月間で毎日40~60分程度の時間外労働をすれば、「チャラ」になる程度のものである。途中途中の「多めの見積もり」をすべて省いて精密に計算すれば、30分くらいになる場合もありそうだ。

 学校では8時15分に朝礼が行われる。授業が始まるのは8時40分。まじめに朝礼に出れば、この時点で25分の超過勤務である。これに加えて10分休みが何回かあれば1時間などすぐにオーバーしてしまう。
 言うまでもないことだが、小テストの採点、提出物のチェック、テストの作成・採点、生徒の相手(志望理由書や小論文の指導をボランティーアで行っているため、時期によっては毎日3~4時間くらいを費やしている)、各種打ち合わせ、授業準備、公開授業のための指導案作成などなど、講師といえども授業以外の仕事はじつにたくさんある。これら以外にも当然、何かしらやるべきことは発生して、それらに手当がつくことは一切ない。すべて「コミコミ」であの値段、である。

 僕は、自らの薄給を嘆いたり、学校への文句が言いたいだけでこれを書いているのではない(まあ多少はある)。ただ、このような待遇では、「学校のために働く」なんていう意識は発生しようがない。このことを雇用側はしっかりと頭に入れておくべきだと思うのだ。だから僕は基本的には、自分と、生徒のためにだけ働く。何をしても金銭的に決して報われることのない非常勤講師の給与体系では、そういうふうに考えられてしまっても仕方ないだろう。(予算がないのはわかりますが、結局組織は人が動かすのだ、ということは忘れるべきでないと思うのです。)

 最近、勤務校の口コミサイトを見た。ひどい評価だった。しかし、概ねは僕の目から見ても真実だった。生徒たちはよく見ている。大人の欺瞞は、すぐにバレる。
 学校の評判をよくするには、説明会で立派なことを言ったり、外面をよく見せたり、新しいことに取り組んだりするだけではだめで、根本的には「生徒たちが自分の学校を好きになること」からすべて始まる。そう僕は信じる。僕の大好きな『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』というアニメでも、大きなテーマになっていた。学校を好きであること、好きでいること。自分の今いる環境を、ちゃんと愛せること。それは自己肯定にも繋がっていく。とても大事なことだ。
 そしてまた、「教員たちが自分の学校を好きになること」も同様に、同じくらい大切であろうと、僕は思う。だから、たとえば講師室の椅子をもうちょっと、いいのに変えてください。お尻も腰もすぐ痛くなって、仕事をするのがつらいです。こういうのがけっこう、勤労意欲の根幹に深く関わっていると思うんだよなあ……。
 あと、共用パソコンのキーボードがダメになったからって、講師がお金を出し合って買うってのは、いったいどういうことなんだろうか? そこは経費なのでは……? そういうことが当たり前に行われてしまうっていうことが、「飼われてる」ってことを無意識に肯定しているような気がするんですけど……。まあ、われわれ非常勤講師は組合にも入れませんから、文句を言うすべもなし、ってことなのかもね……。

 

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