心変わり

あなたの血をなめたいのです

気が変わって

今ではあなたでいっぱいです

あの詩の価値を知ってから

何も書けなくなったのです

あなたに追われて

逃げたわたしは

あなたの内部にあんな血が

宿っていたとは知らなくて

やわ肌ばかりをなめていました

文化のように

くにゃくにゃとした身体をひねらせ

あちらこちらに跡をつけ

それで満足していたのです

それが今は

血をなめたい

そればかり思っています

あなたのふともも流れる

その血をなめたいのです

あなたの頬から垂れる

雨粒のような血のしずくを

指でやさしくすくい取り

舌でころがすように

ただ塩の味の

絹のようなあなたの肌を

今でも恋しくはないのです

ただ食欲を満たしていただけです

わたしがほしいのは

あなたの血なのだ

あの詩を読んで

十年が経とうとして

今さらわたしが知ったのは

海のような味の

海のような暖かさの

巨大さの やわらかさの

あなたに包まれるより

なぜならばそれは母を求めることでしかないからだ

わたしは新しくわたしを知るために

あなたにもとから備わっているその血を欲する

そうでなければ

血のある時代はこないのです