理想の現実

年に一度もセミをさわらない

そんな大人になりたくない

たとえラルフが勇敢じゃなくても

理想の現実を求め続けたい

夢物語のような

ユートピアを描くより

世界の絶望を引き受けて

金と家族と稼業との

兼ね合いのなかで

時に酒を飲み

歌い

泣くような友人の渦の中で溺れ

期待はずれの言葉しか吐けない

そんな親父になりたくはなかった

たとえ誰かが裏切り続けても

理想の現実を探し求めて

流した涙の数よりも

冷や汗ばかりが目立つけど

すべて引き受けて愛していよう

生きているという輝きのなかで

先の見えない暗いトンネル

抜けると宇宙

星々のきらめき

肩を組んで揺れながら歌おう

笑いながら

泣きながら