流行語大賞

君は流行語大賞

流行り神のように崇められ

バナナやみかんが捧げられ

バットでボールカキーン

ピューン

オーライオーライ

空き地から飛び出した道路にトラック即死ボーイ葬儀

有終の美どうせ甲子園には行けないんだ

ドラフトにもかからんし

プロにもなれんし

草野球ですら

わからんだろう十年後

二十年後は

オーきみは流行語大賞ぼくの愛する人

盲目に妄想

エッチな想像

ばっかり先走り現実をないがしろ

手に入らないと知りながらそういうことばっかり考えて

破廉恥に不埒

わかってるんだけどだってでもキスくらいしたいので

またぼくの演出で

月光に溶かされて土と風に混じるような

深い深い青春のディープキスをまたどこかの公園で君と再演したいので

十年も二十年も御無沙汰している

暗闇の中でするキスだけで勃起するような若き日の常識を

夕方の八百屋がやたらに安くて目移りする

「遠き山に日が落ちて」が流れだし

遊んでる子どもたちはもう帰る

赤くて黄色い商店街と

緑の河原に挟まれた

あのへっこんだ公園で

おもちゃ箱をガチャガチャとかき回したい

古びたものらを洗って磨いて

ふたたび現役に戻してやるんだ

あああバットでボールカキーンボーン

ピューンバリーン

ワー

キス

そんな日々を