しずく

現実が天井からポタリと背中に

入り込み巨大な蜘蛛のように

八本の足を

伸ばして胴体を締め付ける

ギチギチと鳴いて信号を送る

受け取った脳が誤動作を始める

涙がつらりと流れ

うめきが漏れる

夜が嫌いになっちゃうよ

暗いなんて嘘だ

宇宙は星の輝きで満ちている

ジャンピングシューズでトランポリンしたいよ

大気圏を抜ける時のゾクッとした感じを

跳躍するごとに欲しい

まだ見ぬセックス

大気と真空のピストン運動を

燃え尽きるほどの摩擦で全身から射精したいよ

毛穴という毛穴から

爆発寸前のアニメのロボみたく

プラネタリウムになりたい

何も見えないこの部屋を

まばゆい暗闇に変える

そのためにここにいる

電気の紐をカチリと引いて

そのままでここに突っ立っている

四方から忍び寄る寒さをはねのけて

僕は宇宙になりたい!

しかし

現実は“そちら”からやってくる

天井より訪れる

目覚まし時計の音

歩く音

冷蔵庫を開けたらしい音

椅子のきしむ音

宇宙のへその緒を

現実が切り裂いてしまった

僕の放熱を時間は湯気に変え

天井を伝ってポタリと落とした

冷め切ったしずくに

僕は震えた