画面の生態系

釣り糸を垂れたまま

朝日を浴び

きらきらに輝く水面の

遠くに波紋

プカプカと揺れる

泡に閉じこめられていた

匂いがはじけて

けむりのように漂い

玉手箱のように

僕は歳をとる

しわだらけの顔が映る

可笑しいが黙す

そして

煙草を吸うでもなく

たまにコーヒーを口にして

鼻歌もせず

まばたきをする

川は流れ

糸は反復し

流れは動かず

景色は変わり続ける

限りないまでに

砂は流れ

石は転がり

魚も泳いでいるだろう

針のない時計

目盛りのない定規

分銅の要らない天秤

声なき声と道なき道と

口をきかない生き物の

ものを思わぬ心の動きが

風となり

蝙蝠をいざなっている

もう蝉は鳴かない

鈴虫もまだいない

のどかな静けさなどはない

だがしかし

何も聞こえない

何もない

何も流れない

そこにあるからだ

動かずに

ずっと