ビッグクランチで会いましょう

 君を待とう

 たとえどれほどに

 排他原理が我らを引き裂こうとも

 たとえどれほどに

 時間の矢に貫かれようとも

 事象地平の彼方に

 君の姿が見える限り

 僕は君を待つ

 君と融合出来たなら

 どれほど嬉ばしいことだろうか

 僕は核力の名のもとに

 君を決して離さないだろう

 そして君の中で

 π中間子を交換するだろう

 質量欠損をしたって構わない

 エネルギーよ、放射されるがいい

 エントロピーよ、増大するがいい

 君と融合できるのであれば僕は

 マクスウェルの悪魔

 魂を売っても構わない

 この世界に

 戻る秩序なく

 光り超えたるものもなく

 ただただ全ては

 不確定性の手のひらで

 光円錐を突き抜ける日を夢見て

 むなしく踊り狂うのみ

 なんて

 誰でも知ってる

 そうさ

 だけれども

 宇宙定数が押し黙り

 神がさいころ遊びをし

 好奇心が猫を殺してしまう

 そんな

 そんな世界でもあることは

 みな忘れてしまったのだろうか?

 だからこそ僕は

 君を待っているのだというのに

 

 君を待とう

 いつか融合する日を夢見て

 僕らは星になるだろう

 白色矮星になるだろう

 僕らは

 どこまでも大きく

 幸福も歓喜

 光すら我が身に閉じ込めるように

 どこまでも大きくなろう

 そしていつか

 チャンドラセカール限界を超えて

 白くきらめく

 ブラックホールとなろう

 たとえこの身、蒸発しようとも