愛という部屋

どんな速度でも
どんな温度でも
愛という部屋で遊べますように

走るときも休むときも
同じポーズでいられるように
たのしいときもさみしいときも
同じ笑顔でいられるように

酔っているとき
その瞬間は爆発のように
好きという気持ちが溢れ出す
覚めたらどうなる?

シャボンが浮かんで飛ぶように
場面の光は揺らめいて往く
桜の花が散るように
美しく果てる

眺めているのが子供の役目なら
僕たち大人はなにをしたらいい?

遠く離れた恋人が僕のことを想う
愛しさが舞い降りる
これはどこからきたのかな
今からどこにいくのかな
どうしたらこれを
抱きしめられるの?

超空間の
愛という部屋は
目を閉じなくてもいつでもあって
移ろいながら続いていく
空っぽになっても唄い続ける
どんな事情でもそこで遊びたい
そしたら誰かが理解できるの?

それじゃまたあとで

うんそれでいいんだ。とても幸せだから。本当に包まれて僕はじつに心地がいい。嘘たちは困ったようにあたりを飛びはねている。

もうだいたいの機能は終わってる。だからゆっくりと閉じていくんだ。愛しているってそういうことだよ。

はじめとおわりをつかんでまぜよう。
順番なんざどうだっていい。
天の川のようにきらめいている。
それでいいんだね。
うんそれでいい。

(無題)

このところ週に2回くらい動悸と涙が止まらなくなる。

それ以外は死なないために浮かれている。

今頃は天に召されているのだろうか。

もう、急にやってくる。

わたしのものにはならないのだ。

数ヶ月か数年かのその永遠にわたしは狭間で苦しむだけなのだ。

鳥籠の中でうたいながら朽ちていくのだ。

浮かれながら。でも飛べないで。

誰も悪くないのはわかっているし、すべてが誰かの我儘でしかない。

わたしたちはカラフルな世界の中でたまたま色を背負うのである。ルーレットのようにそれは時折きめられる。

わたしはいま何色だろうか。灰色かうすい水色だ。まるでかわいた泥のようだ。

あなたは?

それがわかれば苦労はしない。

今頃は天に召されているのだ。

わたしは砂漠の真ん中でただ一人孤独に、目に見えない行列のずいぶん後ろの方に立たされている。

なにもわからない。それで週に2回くらいは、動悸が、涙が、止まらなくなる。

ゆっくり歩いて行くんだろうか。

このまま立ち尽くすのだろうか。

UFOが来て連れ去ってくれるか。

なにもわからないでただ、血をうねらして泣いている。とても静かに。誰もいない部屋で。すべての人類の幸せを祈って。わたしはそこに入れるのだろうか。いまだ半信半疑のままだ。

ああ、そうだ、すべての人類よ。

あなたがたはみなわたしの愛するあの人なのだ。同一のものだ。だから祝福を受けてくれ。そうでなければ、わたしはあまりにさみしいのだ。

助けてください。

この瞬間に星は砕け大陸は沈み海の水は裂けた大地にすべて呑み込まれます。

はじめは何気なくつけたろうそくの火なのです。あなたはあまりにもそれに上手に火をともした。いまでは焼き尽くす火焔となってわたしを足からあぶっています。こんな地球ではなかった。こんな土ではなかったのに。わたしは裸足で駆け回りたいのだ。

別に責めるつもりもないのです。それが宇宙というものですから。ただわたしは時折にだけ、週に2回くらいだけ、動悸と涙がとまらなくなるのです。あまりにもわたしは緑を愛しすぎました。そしてわたしたちは幸福すぎるのです。

静けさが怖い。音楽が止まってしまった。しかしうたえば死が近づく。

金縛りのようにわたしは祈り続けている。

こんなにつらいことはないのだ。

波にさらわれていく。

雨雲がやってくる。

遠くには幾つかの救急サイレンが輪唱のようにさわいでいる。

この夜は二度とない。だから恐ろしいのだ。明日にはもう、今宵は死す。

新しくもない毎日が積み重なっていく。

普通の日々が連なっていく。

わたしは永遠にこの行列の真ん中に立っているのだろうか。目に見えない行列の。そして泣き続ける。とても静かに。浮かれながら。うたいながら。やがて心臓は血によって破裂するだろう。

本当の証拠

嘘は本当を隠すけど

本当は嘘を隠せない

偽りは本当の愛も美も隠す

本当は偽りを前に

ただ見つめることしかできない

醜い嘘の向こうに真実はある

美しい本当の前に嘘は立ち並ぶ

偽りたちの嘲りの声

あなたの嘘であなたが見えない

あなたの本当はただ美しく

悲しげに嘘を見つめてる

抱き合ったことは本当

その情景も

その愛も本当

嘘はそのとき

どこにいたのか

この曇天は月を隠し

雨を呼んで真実を濡らす

あの輝ける

夜の声も掻き消していく

この手に残る美のかけら

あなたの匂い

すっと立つ味

きらめいた指

あの舌ざわり

嘘たちは笑う

本当を笑う

本当は凛と

嘘たちを見つめる

見つめられた嘘たちはその視線を

受け止めてどう思う?

祝いたくて

言葉を探すけど

すべて嘘たちの雑踏へ

祝いたくて

あなたを探すけど

本当は今も孤高

星を見上げて泣いているだけ

あの美しさをまとって

その身ひとつを信じて待ってる

愛してる

愛してる

その証人は

あの日の嘘だ

誰かが言ってた

黒点
低いとこ
ぬるいところ
僕の涙が
落ちてジュウって
溶けるとこ

誰のためでもなく
あなたのために
僕だけを反射して
あなたのために
そんないちにちを
過ごしましたか?

殺そうと
ずっとほうちょうをにぎりしめてる
よくしらないけど
泣いてしまうね

僕たちはいつも抱き合って悲しくて
二人だけになって
その外にあるあらゆるものを
見ないでいたいのかもしれない

愛し合ってる
そのこといがい
証拠はいらない
ただ

ワイングラスにひびが入って
するすると糸のように
抜けていく
そんなものかな
あなたの小指をまた咥えたい
鼻先をくすぐる
ほんのわずかな感触をもういちど
確かめたいな
もうあんなことは忘れてほしい

君の声

声がききたくて

とまどい

雪の降る日のさらさらとした

冷たい空気を思い出す

花ならいつでも摘みにいくから

君の声ならここにある

最後のためにとってある

笑顔も涙もうかばなくても

歩く気力もまるでなくても

思いだすことができなくなっても

君の声ならここにある

花ならいつでも摘みにいく

最後がくるまでとっておく

いま声がききたい

暑さのあまりおかしくなった

記録的猛暑の体温計は

吐息の熱もあげていく

ためいきを火にかえてしまう

君の声が鳴り響いて

頭を壊してしまうまで

それで歩けなくなるまで

いつまでも凍るあの空を

眺めて

死ぬまで

摘みにいく花の住所を言って

君の声じゃなくてもいいから

恋ってきっと

野球場から
放物線で
うちのポストに
文庫が届く

恋ってきっと
こういうことね

古いことばを
ひもといて
わたしを探す
あなたを探す

恋ってきっと
こういうことね
恋ってきっと
こういうことかも

散歩の途中
音がして
振り向いてみたら
球が飛んできた

恋ってきっとこういうことなの

ぐるりとまわって
むかしの涙が
いまを彩る
輝いている

恋ってきっと
こういうことね

野球場から
うちに届いた
一冊の本の
はじめの文字は

二人の経緯

咳き込んで命をなくす
その刹那さと
雪どけの拍手を混同している
肉体と精神

あなたはからだを痛めつけ
わたしはこころを傷つける
美しき張りぼてのアート

誰もが死を待ち退屈で踊る
からだでおどる
こころでおどる
炎に焼かれ剥がれ落ちて死ぬ

あなたの最期を看取るのはランプ
赤茶けた壁の花の絵の下
両手を組んで嘆かずに
醜くなって苦しんで逝く

わたしの心を殺すのは
誰も知らない秘宝の地図と
木のうろに隠す硬い泥玉
朽ち果てて
あの世に置かれ
肉体だけが生き続けていく

二人が出会い別れたわけは
天体の裏に書かれてあって
それを見に行く相談をして
新しい人の誕生に賭けた

恋をしようよ

きらいなものがないのなら

恋をしようよ

忘れるものがなにもないなら

健康的に

恋をしようよ

明日の予定のない晩の

眠るまでの

酔いのように

恋をしようよ

ソファの柔らかさのように

砂浜の広がりのように

宇宙の果ての暗闇のように

名前のつかない

恋をしようよ

あてのない散歩が好きなら

路傍の花を愛するのなら

勇気をだして

扉をあけて

恋をしようよ

いずれ誰かに殺されるのが

怖くて怖くて仕方がなくても

明日の天気が気になるうちに

たったひとつの指をつなごう

何通りあるんだろう?

すべてのことを試してみようよ

明鏡止水の美しさ

なだらかな池の上に立ち

どっちにするのと問いかけながら

迷ってるのはあなた自身だ

恋をしようよ

恋の証

みんな好き
すべてが恋で
全部が全身
愛してるって
わけもないこと

ピアノの音
ヴァイオリン
歌声と囁き
虫や川や星にも
耳をすませたくなって

あなたと離れる
その時にはぜひ
花火をしよう
打ち上げ
手持ち
線香花火
なんでもいいから燃え尽きるのを
僕は見ていたい
どんな色でも構わない
どんな光が照らしても
それが笑顔でなくたって
あなたの顔を見ていたい

さよならは積もる
減ることがない
さよならはそのままで
こんにちはって
何事もなく続いてく
終わったことは確かだったのに

きらめくよ
歩いていても
一足ずつが
水たまりを跳ねるように
光の粒をとばしてく

恋の鮮やかな模様
愛のセンチメンタルな結晶
微笑みは宝箱を開けたように
僕の心をひそかに照らす
遠くにいてもそれがわかる

隙間から
風が吹いて
波が起こって
さらっていくのだ
恋の砂浜

そのひとつひとつが
証拠になる

アイラブユー

愛は愛と知る
僕は僕と成る
知らない子供はわからない
すべてありのまま すべて
光を見ている
手を繋がないで
UFOも見ない
そらの名前をあてっこしてた
踏みしめる土とゴミの山の道
僕はバイパスをひた走り
永遠にこない君を待ってる
そんなことはもうわかってる
涙は高速に流れてく

愛を愛と知り
君と僕は成る

夢みてるんだ
朝の春の夢
届かない愛
伸ばせない腕
雨は降り続き
夜はもう来ない

目に見えなくて
すべて抱きしめたいけれど
タイムマシンに乗っかった
新しいことはもう
何もない
さらばさらば
愛していたもの
微笑みと抱擁
ついに咲かずに散ってった
火山の地下のマグマの火

言ってはいけない言葉なら
とうの昔に塗り潰している
愛を知る君は君と成り
このままで僕はまだ成らず

雪だるまへ

「雪だるま」でラーメンを食べよう

とても深夜に

おじさんは今日も世間話をしてくれる

テレビがいつもついている

『サバイバル』とか置いてある

いつも誰かがビールを飲んでいる

僕もいつかはビールが飲みたい

でも僕はいつも

毎回違ったラーメンを一杯だけ食べて帰る

塩としょうゆは600円

味噌ラーメンだけ650円

とてもせまくてカウンターには

とても十人は座れない

だけど決して混むことはなく

静かに飲んで食べている

とてもとても古いお店

君を連れていきたい

どんな顔をするだろう

写真のような一瞬を

君と過ごしたい

永遠に僕たちがそこでだけ

僕たちでいられるような

たとえ死んでも

もしも別れても

どんな悲しみが流れ込んでも

いつか遠くへ行ってしまう

いまも遠くにいる君へ

恋と幻

麻薬のように入り込んで支配してくるのだ

恋は

幻のように消えていくのだ

指の先まで充ちていて

どうしようもなく脈動する

のたうち回る

狂ってピアノを弾くように

麻薬のように欲しくなるのだ

もっともっと

でも恋はいつも幻のように

まちがっていると人に言われて

朝になって「そうかもね」って

うなづいたって止まらない

星が流れたり

空を見つめたり

涙があふれてきたり それで

散歩に出てコーヒーを飲んで

ひとりでいるのを孤独と呼んで

また空想にふけりだす

そして夢を見る

君の夢を見る

君が混じった知らない誰かと

手を繋いでる夢を見たんだ

幻のような顔のない人

それよりも

ただひとりだけの君をずっと

目が覚めてからは考え続けてる

いつまでも恋は

孤独でいるんで

いつまでも恋は

孤独でいるんです

わきあがってくる大きなもののために

それを永遠に信じ続けたいために

注射器で恋を流し込むような

そんな真似は絶対にしない

だから今日も君を想っているのだ

心から

いつか言えるようにと

すべて幻でも

空想をやめないでる

夢のつづき

夢は終わり、夢はつづく。

何万分の電話。

何百回の交合。

一度きりのあらゆるすべて。



曲がっても真っ直ぐで

まるで地球の輪郭のよう。



真っ直ぐ行っても曲がっていって

まるで地球の輪郭のよう。



僕らの世界は終わりを折り返し、

出発地点を見下ろして、

高く高く舞い踊る。



誰もいないところで。

誰もいないところへ。



現在地を笑い

目的地を笑い

出発地点を泣いている。



夢はつづく。



何千回の抱擁。

何十回の栄光。



あと一度だけ

何度でも

一度だけ。



繰り返されることのないもの。

永遠に戻ってこないもの。

約束したこと。

いつか新しくなれること。



さよならのかわりに

愛し合うことを選ぶ

人たちもいる

ただせつなさを胸に抱き



さみしさを捨てて。

悲しみにすがらず。

怒りも憎しみもなく。

せつなさだけを勲章に。



北極点をくるりとまわって

地球をまわったことになるなら

僕らはそこで踊り続けよう。

夢のように

夢のつづきを演じるように

うつつの僕らを楽しんでいよう。



愛がいつしか溶けていくなら

もちろんそこは海になり

僕たちは泳ぐだろう

裸になって

笑いあってね。